前回予告した「そのものずばりの1エピソード」をさっそく。



顔なじみの推定30代のその男性、あとで判明したことから仮にNさんとしておきます。Nさんはわたしたちと時間的にバッティングすることが多く、3コースしかない完泳専用コースを分け合う必然から「顔なじみ」になる一般客のスイマーさんでした。やがてわたしたち1年生も知ることになるんですが、2年の先輩たちも3年の先輩たちもずっと前から顔なじみの人だったそうです。



夏休みが終わって2学期の初め、3年の先輩たちの部活卒業の儀式が簡単に行なわれ、2年のY先輩が部長になってすぐの頃、とあるちっちゃな微笑ましい「事件」が起こりました。



2年生3人1年生5人が参加していたその日の練習、Nさんはよくあるようにわたしたちより早くからプール入りしていて、ひとりっきりで優雅に独占状態で泳いでる彼のところにわたしたちが後からお邪魔するような感じ。まあ、それはいつもお互いさまなんですが、この日はわたしたち1年生部員にちょっとだけヘビーな練習メニューが課された初めての日で、ほぼ水泳未経験でまだまだおヘタな1年生1人2人が毎回遅れ気味でした。



「住み分け」のために、基本的にはNさんが1コースと2コース左半分を、わたしたちが2コース右半分と3コースを、と泳ぎ分けるのは普段どおりだったんですが、時々1年のおヘタなコは、フォームが左右に広がりすぎるせいで、2コースで隣り合って泳ぐ際はNさんに手加減してゆったり待ってもらってる、って状況が多発してました。そんな中、おヘタなコのひとりSちゃんが、わたしたちのループが途切れるまで待ってくれてるNさんのPさまをブレストの泳ぎ出しのキックで蹴ってしまう、という事件が起きたのです。



Sちゃんによれば、自分の左手に立ってるNさんの競泳用ビキニの股間に、スタートの蹴り出しの左足裏がムニって当たってしまったとのこと。ひゃあっ!と思ってすぐ立ち上がり振り返って拝み手でごめんなさいと謝ったら、笑顔でだいじょぶだいじょぶと許してくれたそうです。「蹴り」っていっても曲がりなりにもスイマーのしなやかな泳ぎのキック。強く当たったという感触はなかったものの、とりあえずSちゃん自身がビックリしたのと気まずいので謝ったという、まあ大事には至らないくらいの「事故」だったんですね。



ところが、それをSちゃんがわたしたち1年生の内の仲いいコたちにはしゃぐようにしゃべっていたのがマズかったのです。結果的に4、5人がキャピキャピクスクス泳ぎの合間にコソコソそれについてしゃべってたせいで、部活終りの締めのミーティングでY先輩からお目玉をもらうことになりました。



「... あとSと1年ほぼ全員!ここのプールであたしたちはコースの貸切利用とかしてない、よね?あの常連のお客さんは優しいからいいけど、それでもあたしたちとはまったく五分五分に、泳ぐ権利がある一般のお客さんだから。アクシデントは謝って終わりだとしても、下ネタでクスクスしゃべってたらものすごく失礼、だよね!?」後々だんだんと分かってくることですが、Y先輩はすごくキッチリした人ではあるものの、おカタくてキツい人ではありませんでした。でもこの時はわたしたち1年生はシュンとしちゃって、反省しきりとなりました。



わたしはSちゃんとは別のクラスだったんですが、部員で同じクラスのUちゃんが小学生時代からSちゃんと仲良しだったので、その週の土曜、3人でファミレスでおしゃべりすることになりました。あの場では部員として、社会的マナーとして反省はもちろんしていたものの、SちゃんとUちゃんはもうNさんとそのPさまのことで有頂天で、その興奮を分かち合いたくてわたしを誘ってくれたのでした。



「もう、とにかくビックリしたんだよ。ちょうどあたしの土踏まずの部分に収まる感じにムニって当たって。男子たちのって見た感じほんの親指くらいしかないじゃん?あの人のはねー、なんていうか、ぼってりした肉のかたまり、って感じなのよ。あたし、家に帰ってトイレット・ペーパーの空の芯を探して、土踏まずに当ててみたのよ。マジ、そのくらいあったから!」「えっ、でも硬くなってるわけじゃないんだよね?」とUちゃん。「うん、柔らかかったよ。でも柔らかいままでもそんだけ大きいんだよ!どーする!?」「どーする、ってw どうもしないでしょ。どうかするの?」「いやー、どうかしたいよー。てゆうか、先輩たちは既にどうかしてるよね、絶対?」わたしは圧倒されて聞いてるばかりでしたが、ふっと思いついた疑問を口にしてみました。「平均サイズって13cmとか14cmとかいうよね?」「あ〜。でも、あの人のは平常でそのくらいはあるよね。見ても分かるよね?で、とにかく太さがあるの。どうだろ... あ、ソーセージ!」Sちゃんはそう言うとファミレスのメニューをめくり始めます。が、イメージに合うものがなかったらしく — 「う〜ん、魚肉ソーセージ?あれの太いやつ、あれでまだ細い、かな〜?」その場の3人とも、家に帰って、あるいはスーパーやコンビニに寄って、魚肉ソーセージやフランクフルトなんかを探ってみたのは想像できます。もちろんわたしも、コンビニで「おつまみ極太フランク」とかなんとかいうのを買って帰っちゃったのでした。



自分の部屋に落ち着いてから測ってみると、トレペの芯は直径4.2cm、おつまみフランクは3.8cmありました。わたしは普段見かけているNさんの姿を頭の中に思い浮かべて、そのくらいの太さのものがアリーナのビキニの中に収められている像を思い描いてみました。うん、確かに、そのくらいはありそうな気がする... 平常でそのくらいあったらおっきくなっちゃったらどうするんだろう?その当時はまだおこちゃまの素朴な疑問程度だったのが、やがてどんどん雪だるま式に大きくなって暴走したりし始めるのです。
(随時続く)