Yさんが選んでくれたホテルは、いわゆる「シティ・ホテル」とかいう感じの、こざっぱりしてて軽くオシャレ感もある、フツーにちゃんと泊ってもいいようなホテルでした。ラブホテルほどモロでなく、ビジネス・ホテルほどうら寂しくもない、そんなホテルをゆかのために選んでくれるような、そんな男を選ぶようにね、とのことでした。父と娘に見えなくもない2人なのだからそれほど誰にも見とがめられないにしても、Yさんはさらっとスマートにフロントへの対応をこなしてて、あたしはそういう様を見るにつけても、同年代の男子じゃこういう風には進まないだろうなと感じてました。



「どうしよっか、ルーム・サービスでも取る?」とYさんが部屋でくつろぎ体勢に入る隙も与えず、あたしはいちかばちかYさんに抱きつきました。ぼやぼや話しこんだりしてても決意がくじけるばかりだと思ったからです。「こらこら、ゆかちゃん?」と冗談ごとにまぎらすように頭をポンポンしてくるYさん。あたしは説得する隙を見せまいと無言でますます強く自分の体を密着させました。



「OK、わかった。わかったから、ちょっと離れようね?」Yさんの声にちょっとだけ怒気というか苛立ちというかが感じられたので、あたしは仕方なく体を離しました。「さては、初めからこういう作戦、ってことだったのかな?」語気は柔らかくなってて何となく可能性が見えた気がしたので、あたしはしおらしく無言でうなづきました。「う〜ん... ゆかちゃんがね、18才になった自分、20才になった自分、22才になった自分、と想像してそこに不安を感じてるのは分かるよ。放送できみがそういう不安を語ってるのを観ると愛おしくも思う。でも、だからといって、自分のパパくらいの年の男に思い切ってパっと捧げちゃって、で後になって後悔しないかな?  — そういうことも考えてみたほうがいい、でしょ?」あたしは、何となく予想してたとおりの諌めごとを聞いて、やっぱり納得しそうになりました。でも同時に、ムラムラっとイタズラな心が湧いてくる、とある現象を目撃してもいました — Yさんのジーンズの前立ての右側が目立って大きくふくらんでいる、という。



あたしは頭をフル回転させて、Yさんが断れないし、断るほどでもないと考えてくれそうな、取引的オファーを放ってみました。「うん... じゃあ、とりあえず18になるまで、なんなら高校卒業するまで我慢する。でももし、その時のあたしがもうメンヘラを脱却できてて、それでYさんがあたしのことまだ嫌いじゃなかったら... その時はお相手してくれる?」これは、Yさんはあたしのことを心配してくれてて、かつ好いてくれてる以上、それなりにすんなり(社交辞令的にだとしても)通るはずとにらんでの質問でした。「もちろん、そりゃもう。ゆかちゃんがそういう対象として見てくれてるってのは光栄は光栄と思ってはいるんだからね」あたしは、してやったりとばかりにもう一手踏み込みました。「よかった。それって、オンナとしても見てくれてるってこと、だよね?」「そりゃそうだよ。もしゆかちゃんが今JD1だったらフツーにお相手してる」「ふふふ。おっきしてるもんね?」Yさんは一瞬バツが悪そうでしたが、すぐにからかいベースで言い返してきました。「こらこら!どこ見てんだよw」



あたしはもう一手、保険というか約束手形というか前売りチケットというかを求めて、出を打ちました。「あと1年半我慢するかわりに、今日のおみやげに、おちんちん見てみたいな... ダメ?」「え、待って?どうしておちんちんを見ることがおみやげになるのかな?」「だって、あたし、放送でも何度か言ったようにエロ動画とかのフェラ・シーンってキモくて観てらんないの、知ってるでしょ、たしか1回盛り上がったことあるし...」「で、今、Yさんがおっきしてるの見て初めて、好きな人のなら愛おしくて見てられるのかもって思ったの... ダメ?」それはもちろん口からでまかせなんかではなく、実際あたしがずっと不安に思い将来を悲観してた理由の焦点ともいえるものでした — 男の人とそのセックスにちょっと嫌悪感を抱いてて、それゆえ「好き」の感情から「恋愛」という行為に発展させていくのに臆病さを抱えてる、という。ムチャクチャな悪ふざけを言ってるようで、その時のあたしには実は死活問題だったのです。
(「3」に続く)