私の主観時間ではほんの15分ほどに思えた最初のファック。あの海外リゾートでのあのカップルの、そしてその男性と私の妻との、いつ終わるか知れない長い長いファックを想い出していた私は、勝手に少しがっかりの感を抱いてしまいました。激しさと強さ、そして軽くサディスティックに妻を一気にメス状態に突き落とすその疾さには舌を巻きつつも。ところがもちろん、そんな私の思い違いに反して、男性のファックのメイン・メニューはこの短めのアペリチフに続いてようやく始まったのでした。



脱力して床に膝を折ってへたりこみ、おそらくは失神している妻の背中や尻をしばらく優しく撫でさすりつつ射精の余韻を楽しんでいたらしき男性は、やがてペニスを抜き、コンドームを手近なゴミ箱か何かに捨てました。「奥さん?もうお気は付かれました?」と妻の耳許で尋ねる男性に、妻がうなずきつつ何かを答えると、「では、続きをベッドでゆっくり楽しみましょうか」と妻をお姫様だっこで抱え上げ、洋寝室のベッドへと向かいました。



左手のベッドに妻を座らせ、ベッド間のスペースに向かい合って立った男性は、まだ水平以上の仰角を保ったままのペニスを示して促しました。「奥さんの大好きなこれ、また元気いっぱいにしてもらえますか?さっきはまだ味わい足りない感じでしたでしょう?」妻は、待ってましたと言わんばかりに、もしくは逆襲のターンと言わんばかりに、半勃ちでももう20cmは超えていそうなそのペニスにむしゃぶりつきました。



あっという間にへそ上まで達するサイズと仰角を取り戻したペニスを、妻は舐め、しゃぶり、甘噛みし、咥えこみ、さらには陰嚢を舐め、吸い、含み、と、私も見たことのないようなフェラチオのすべてを繰り出し、男性への崇拝と服従の念と飢えをめいっぱい表していました。2、30分ほども続いてからでしょうか、男性は「お上手ですよ、奥さん。今度は私が奥さんのプッシーをたっぷりと虐めてあげますね?」と、そのまま妻を後方のベッドに押し倒し、足首をつかんで高く挙げた姿勢での正常位に入りました。



布団の中で眺めている私は、妻に対しての男性の誘導が、同時に観る者 — この場合は私 — をしっかり意識していることに気付きました。この和洋室が「便利」であるというのも、男性が変則的な場所取りで変則的な体位を使うのも、「彼ら」のような捕食者の常なる巧緻な策の一環であり、そして私達夫婦はもう、完全にそうした手腕の虜となってしまっているのでした。



2つのベッドを交互に、滑らかによどみなく使いつつ、男性は妻を自由自在に扱い操り、あらゆる体位をあらゆる角度で私に見せつけ、また妻を、せがみ声をあげては失神する快感に中毒したメスそのものへと追いやり続けました。合間に1度時計を見た際にはもう0時近くで、この2回目のメインのファックはその時点で軽く2時間を超えていた見当になります。



あろうことか私は、布団の中でペニスを握りしめたままいつしか眠りに落ちてしまっていたらしく、夜の間に何時間の、何回のファックが為されていたかは知らず終いとなりました。「あなた、あなた?もうお暇しませんと」と妻が私を起こした時にはもう高々と陽が昇っており、9時を過ぎていました。既に着替えを終えてさっぱりと紳士然とした姿になっていた男性は、葉書の半分ほどのサイズの名刺代わりのカードをくれ、「いつでもご遠慮なくご連絡くださいね。うちの妻もお会いするのを楽しみにするはずですから」と私達夫婦を送り出すのでした。



帰宅し、夫婦の寝室に落ち着いてからやっと、私と妻は今回のこの「冒険」について気兼ねなく喋れる時間を持ちました。男性からもらったカードには、どこかのリゾート施設らしき環境をバックに笑顔の彼と若い女性が写っており、アルファベットで下の名前らしき愛称がサインしてあり、メール・アドレスが欄外にプリントされていました。「脈絡的には奥さん、だよねぇ?それにしてもすごく若くない?かわいらしすぎるし」と妻が言うように、写真の女性は20からせいぜいでも24くらいにしか見えず、女性ファッション誌で見るような女子大生や新人OLのような屈託なさげで清楚で愛らしい少女感をまだ漂わせていて、私は何か心がざわつくような、快不快の入り混じる気分でした。「どうする、あなた?このコが... 一緒だと思うと、どうにかなっちゃいそうじゃない?」妻の言うとおり私は、むしろ「あれはあれ」と終わったこととして忘れたほうがいいのではないかとも考えましたが、次の年の春にはまたどちらからともなく、連絡を取ることにしてしまうのです。