現在30代の僕は、週に最低でも14回はセックスをし、したいと思う女性とはたいていセックスできる身分のスポーツ・インストラクターです。でも24才で今の職場に入った当時の僕は、平均あるいはそれ以下のペニスとセックス力を持つだけの、どこにでもいる普通の男でした。初期から僕を、心技体ともに鍛え上げ、どんなお客様でもお相手できる男に育てあげてくれたのは3つ年上のE先輩でした。今でも僕は、月に1、2回くらいはE先輩にお相手してもらうのですが、その度に彼女の変わらぬ美しさといや増す性的アビリティに驚嘆させられ狂わされることしばしばです。とある求婚アプローチに少し心が揺れる今、僕の後ろ髪を引いて離さないのはE先輩との多くの目眩くような経験の記憶の数々なのです。



大学を出てごく普通の会社員としてなんとか就職できた僕は、ほんの2年足らずでその職を失ってしまいました。この際だから何でも試してやれ、という気でいろいろ試した再就職への試みの内で、唯一ひっかかったのが今のジムでした。小学生からサッカーをやっていたのと体格だけは良かったのがあってか、何となく最初の見学・面接から好感触を得ていた僕は、高い時給と手厚い福利厚生に大きく惹かれてはいたものの、長く勤めることやキャリアを向上させることは特に考えていませんでした。都内の、それも中心部と言える区にあってその街とジムは、不思議と鄙びてもの静かな様子と、普段の日常をどう過ごしているのか見当のつけ難い高所得層の人々で、埼玉出の僕にはちょっとした異次元感の感じられるものでした。



まずはマシン・トレーニング助手とプール監視員兼インストラクター見習いに任じられた僕は、最初の指導係の男性インストラクターKさんの下で3ヶ月の試用期間を経ると、次なるより細やかでシヴィアな指導を受けるべく、E先輩に引き渡されたのでした。マシン・ジムやプールや館内でたまたますれちがう時やでその姿を見知っていただけのE先輩に最初に引き合わされた際、僕は内心ものすごく嬉しく、またドキドキもしていました。身長は目測156cmほどと小柄ながら、常に毬のように小鳥のように軽やかに弾むような足取りで歩いている姿を、そしてプールやマシン・ジムでは引き締まっていながらムッチリと筋肉ヴォリュームのあるお尻や太ももを見覚えていたE先輩は、様々にかわいい・綺麗な従業員揃いのこのジム内でも、僕の憧れの — そして性欲の対象No.1だったからです。「U・〇〇くんね?E・〇〇です、顔はけっこう合わせてるよね?今日からよろしくね」とほぼ初めて面と向かって言葉を交わしたE先輩は、何というか、「理想の美人スポーツ・ウーマン」と言うのにドンピシャな、溌剌・快活ながらどこかイタズラっぽくこどもっぽい人懐っこさを感じさせる第一印象でした。それが僕の読み違えであるのはじきに大きく判明していくのですが。



E先輩に付いてからほんの1週間ほどで、僕は最初の洗礼を食らいました。マシン・ジムで助手として一緒にお客様のFさんのお相手をした後の休憩時、E先輩からちょっと驚かされるような指導を受けたのです。「Uくんはさぁ、スパッツの下ってニット・ボクサーみたいなの穿いてる?」僕がそうだと答えると、「ふぅん、やっぱそっか... 普段穿いてる下着の、だよね?」とE先輩はどこか不満げです。「たとえばあたしなんかは、ほら —」とその場でゆっくり1回転すると「スパッツの時にはノーパンなのね。で、ここでイントラやってく人は基本的にノーパンかTバックで、下着の線は出さないようにしてんのね」僕は何か、ドギマギするような思いで先輩のレクチャーにうなずくばかりでした。「で、お客様がただってやっぱり、セクシーでゴージャスな雰囲気を気に入ってここのジムを利用し続けてくださってるの。たとえば今のF様だと、もう10年くらいのご利用なのね。で、Uくんは4割がたくらいエレクトしながらあのお美しいF様を熱く見つめていたわけだけども —」僕は耳まで真っ赤になる思いで愕然としました。「 — しっかり発達したペニスがスパッツ越しにくっきり分かってこそ、ホスト・ゲストともに昂揚感と自己肯定感の内にエクササイズに励めるんであって、男性ホスト側がこっそり一方的に興奮してるようじゃ、お客様の気分も台無し、なのね?分かる?」試用期間は済んだというもののまだまだペーペーの僕には、E先輩の言葉は激烈なものでした。Fさんは40才前後の、おそらくお子さんもいる僕の内心での憧れの美人ミセスのひとりだったのですが、E先輩はそういうことのすべてを鋭く見取っていたのです。なおかつそのホスト・ゲスト論、そしてこのジムのどうやら特別なあり様の意味、それを何の気なしにビジネスライクに経営哲学よろしく披露する先輩の口調。もしかしたら僕は、そこで「逃げ出す」べきだったのかもしれませんが、逆に何か燃え立つようなものを感じて、E先輩の下で独特の「キャリア」を積むようになっていくのでした。
(随時続く)